凄まじく冷たい風が吹き荒れた土曜日、映画「ダーク・ウォーターズ」を観てきた。健康被害の危険を知りながら汚染物質を投棄してきた巨大科学企業デュポンと、地域住民のために10数年も戦い続けた弁護士の実話に基づく物語。ここには、あっと驚くような逆転劇や高揚感をあおる感動的なスピーチはない。それでも、観客は一瞬も集中をそがれることなく一気にエンディングまで連れていかれる。実に見事な演出だ。暗闇のなかで劇場全体が大きな感動に包まれているのを感じるというのは、そうあることではない。
主人公となるのは、自分のやるべきことに愚直なまでに取り組む、どちらかといえば地味な弁護士。昨今やたらと求められるリーダシップやコミュニケーション能力に優れた人では無さそうだ。それでも、つまり人付き合い少し苦手でも（だからこそ、かも知れないが）、ひたすら目の前の問題に実直に取り組むことで多くの人に光明をもたらす成果を勝ち取ることができるのだ、ということをこの映画は教えてくれる。
弁護士を支える妻役のアン・ハサウェイも控えめながら実にいい演技してる。間違いなく今年観ておくべき映画のひとつなので、ぜひ劇場へ。
