Green, blue and etc.

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渡りの足跡

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解説にある「ネイチャーライティング」って言葉は初めて聞いたけど、考えてみると一時期よく読んでいた池澤夏樹の作品群も確かにこの分野に入れられるんだろう。ただ、日本でこの種のアプローチを実践している作家(少なくとも実績を残している作家)は非常に少ないように思う。あと今思いつくのは福岡伸一先生くらいか。

ところでこの本、渡り鳥にまつわるエッセイかと思いきや、視野は自然科学的に(あるいは社会科学的に)縦横に広がってやたらと面白い。
例えば、安曇野出身のハチクマっていう渡り鳥は、総延長距離にして約1万キロを50日以上かけて移動し、そのルートは東アジアのほとんどの国を周遊するという。いったい、彼らは生きるために渡りをするのか、それとも渡りをするために生きているのか。いずれにしても不思議な人生だ。ここらへんで、中島みゆきの歌詞「まだ見ぬ陸を信じて何故に鳥は海を行けるのー(「最後の女神」より)」思い起こす人も多いだろうね(?)。でも実際のところ、あの小さいな頭でどれくらいこの壮大な旅程をイメージできてるんだろうか。

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かと思えば、話題は戦時中の米国の日本人強制収容所の話に。かつて米国で不利益を被った日本人がいた、程度の認識しか持ってなかったが、実際に収容されていたのは日本人でありながら米国の自由と民主主義を信じ、そして裏切られ続け、それでも理想のアメリカ人であろうとした人達だった(少なくともそのような人がいた)ことが分かる。

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各章は独立しているので、好きなところから読み始めても大丈夫です。読み進むほどに面白さが増してくる本なのでお時間があればぜひ。